音の狂う原因
調律後から時間の経過と共に音は狂ってきます。狂う原因をいくつか挙げてみたいと思います。
①温度湿度による変化
②使用による変化
③ピアノ個々の特性による変化
④調律のハンマー操作による変化
①について、適切な温度湿度下に管理されていると安定を保つことができます。部品の多くは木材である為、常に伸縮を繰り返しており、室内が冷えるとピッチは上がり、暖まると下がります。
②について、まず新しいピアノは弦の伸縮性が大きいので直ぐに狂いが生じてしまいます。また使用量が増えると打弦による音律の狂いや調整の変化も生じやすくなります。古くなったピアノはピンルーズ(チューニングピンの保持力低下)の発生により狂いやすくなる事もあります。
③について、同じ機種であっても個々体の微妙な違いから変化量の差が生まれます。
またメーカーの違い年代の違い等による差も相まって狂い方は千差万別です。
④について、ハンマー操作は調律師の最も狂い方に関与する部分であり、重要な作業であります。1本あたり90kgで引っ張られている弦が長さ6cm強のチューニングピンに巻き付かれている訳ですが、張力のバランスを適切に保ちながら、230本近くあるチューニングピンと弦の収め処を見極めセッティングしていく手業は高い技術と経験が必要です。
収まり処が不安定だと、一瞬音が合っていても、強打鍵によりあっという間に狂ってしまう事もあります。コンサートの調律では開演から終演するまで音律を保持出来るかどうかは、ハンマー操作の良否が大きなウエイトを占めていると言っても過言ではありません。
また、弦の渋滞防止やチューニングピンとピン板の関係性を保護する意味でも丁寧なハンマー操作による調律は重要だと考えます。
ハンマー操作が上手くなされているピアノは音律保持もし易く、音色も良好、長期的にみると断線もしにくくなる等、ピアノを長く良い状態で保つことが可能です。
↑ピン板内に深く埋まっているチューニングピン
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