グランドピアノのタッチ調整について

グランドピアノをお持ちのお客様より重いタッチを弾きやすくして欲しいとのご依頼を頂き調整しました。


お客様からの改善要望

◉タッチが重く感じており長時間練習すると腱鞘炎のような状態になってしまい困っている。ベース付近の音が伸びてしまい、不快である。

現状の状態を確認

◉アクション及び整調の現状
鍵盤の高さ63.5mm〜64mm
鍵盤の深さ10.0mm〜10.1mm
打弦距離(ストローク)48.5mm〜49.0mm
ベディングスクリュー、高音側が張っている
鍵盤フロント部の左右遊びがかなり少ない
鍵盤バランス部の硬い部分一部あり
ダンパーの掛かり5mm〜10mm始動
ベースダンパーフェルトの止音不良多数(左の弦が止音していない)
各部フレンジのトルク、一部スティックあり
その他整調工程は概ね適正値

参考までに各セクションの鍵盤ウエイトを測定
◎鍵盤ウエイト測定
DW(ダウンウエイト)、UW(アップウエイト)、BW(バランスウエイト)、F(フリクション)
4鍵目 DW65g,UW22g,BW43.5g,F21.5g
5鍵目 DW65g,UW26g,BW45.5g,F19.5g
40鍵目 DW50g,UW19g,BW34.5g,F15.5g
41鍵目 DW50g,UW18g,BW34.0g,F16.0g
64鍵目 DW55g,UW19g,BW37.0g,F16.0g
65鍵目 DW50g,UW24g,BW37.0g,F13.0g

印象として、ベースが特に重く反応が鈍い
全体的にF(適正値は10g〜15g)が大きく、実際にハンマーシャンクフレンジ及び鍵盤ブッシング、ホールでスティックを起こしている箇所がある
また、ダンパーの掛りが早く、指先に感じる重みが大きい


◉進めていく調整
まずは鍵盤を全て外して、バランスピン、フロントピン、キャプスタンボタンを掃除を兼ねて全て磨きあげる。バランスホールの硬さ、ブッシングクロスの遊びを一定に調整してスムーズなテコ運動が出来るようにする。
↑ピン磨き参考画像
次にハンマーシャンクフレンジのスティックを取り除く。トルクゲージで測ったところ6g以上の箇所がありCLP潤滑剤で処置済み。
整調関係を行う。打弦距離が特に広くバラつきが見られたので46.0mmにて調整。
ダンパーの掛かり出しも23.0mmへ調整。



↑ダンパーレバーの位置を約10mm上げます。参考画像
今回の場合、鍵盤のテコ運動のバラつき(硬さ)、ダンパーの掛かり出しが早過ぎ、ハンマーフレンジのスティック、極端に広い打弦距離、ベディングスクリューの張り、この辺りを適切に改善することにより劇的に印象がよくなり軽やかなタッチになりました。
またベースダンパーフェルトの止音不良については数が多過ぎるため、ガイドレール全体を左方向に僅かずらして、左右の弦を同時に止音する様にバランスを取り調整しました。

お客様からも弾きやすく、弱音も出し易くとても良くなったとご満足頂きました。
アクションのコンディションをある程度整えた結果、なお弾きにくく感じられる場合は鉛調整や、その他次のステップが必要になりますが、案外生ピアノの調整をしっかり整える事で改善されることも多いです。また、調律や整音によっても、軽やかさ、重み、鍵盤の深さ等の違い(物理的な調整をしていないが)を感じることは多々あります。

お客様がどの様な音とタッチを求めているのかを、しっかり話し合いした上で作業を行うことが良い結果へ結びつくと考えております。

札幌の一級ピアノ調律事務所ebony and ivory

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