ピンルーズの修理
ピアノの弦はチューニングピンへ巻きつけられフレームの奥にあるピン板で保持されています。木材が乾燥の影響を受けて、その保持力が極端に悪くなってしまうことがあります。張力をかけて正しい音律にしても、強めの打鍵で弦を打つと、みるみるうちに半音近く下がってしまいました。
保持を改善するには、
①オーバーサイズの太いチューニングピンを入れる
②突板、薄皮等の詰物を入れる
③ピンタイトナー(粘り気のある専用の液体をピン外径から深部へ染み込ませる)
大まかに以上の様な対応が考えられます。
①は外径が大きくなると既存の弦のコイルが若干短くなることと、明らかに修理したピンの色味や質感のちがが目立つ為却下しました。
③は根本的な解決とはなり難い事と縦型ピアノの構造上、液体を満遍なく深部へ充填させるのは困難な為却下しました。
②今回は薄皮をピンに巻きつけ強度を上げ保持力を回復させる選択をとりました。
今回はかなり緩めだったこともあり、薄皮を半円状にしたものを二枚挟み込みしました。
チューニングピンは出面よりも内部に入り込んでいる部分がより多くなっています。
ピンをある程度まで打ち込んで周りのチューニングピンとの高さの兼合いをみて、飛び出た薄皮の処理をして作業完了です。
ピアノ自体が50年程経っていたので、弦を緩めてチューニングピンから弦の爪を抜き、修理後、爪を戻す際に折れてしまう事もあります。極力負荷がかからない様に慎重に爪を外し、元へ装着します。
強度もしっかり出たので一安心。
木材等の天然素材を多く使用しているので温湿度の急激な変化(20度前後、40〜50%位ですと安心です)、直射日光、床暖房上のピアノ設置等は大きなダメージを及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
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