調律師による調律の違いは何か?

分かりにくいタイトルかもしれませんが、調律師が変わると、調律されたピアノの音色が大きく変わります。
タッチの調整を一切していなくても、調律によって指先に感じるタッチ感までもが変化してしまいます。

調律に必要なこと。日々頭の中にあって考え試行錯誤していることなどを書いてみました。

先ずは、とても大切な要素だと思いますが、
『狂いにくい調律』。
せっかく素晴らしい調律が出来たとしても、フォルテシモ一発の打鍵で直ぐに音律が狂ってしまっては残念です。

ピアノ弦はとても張力が高い為、チューニングピンの廻し方や打鍵タイミングや強弱によって、弦の響きの良いポイント、張力が安定していて狂いにくいポイントを探りながら230本近い弦をセッティングすることが重要です。感覚的要素が強いため、沢山のピアノを調律しながら、結果の良否確認を常に繰り返し修正しながら体で会得するしかないと思います。とても熟練が必要で長い道のりです。

次に
『強弱によって音色が変化すること』。
これもとても難しいことですが大切な要素です。
多くのピアノには88本の鍵盤がありますが、弦は230本ほど張られていますので、低音の一部分を除き一つの鍵盤を弾くと2本、或いは3本を同時に打弦して一つの音が出る構造になっています。
基準の音(基音)を決めた後に残りの1本ないし2本の弦を、基音の音を聴きながら調律して一つの鍵盤の音が完成します。ユニゾンを合わせる等と言います。
ユニゾンも人それぞれ大きく違いが出る部分ですが音の立ち上がり方や、伸び方、減衰、太さ、質感、明暗等々、音色の要素に影響を与えます。個々の弦の音色感と2本ないし3本の弦の響きが合わさった時に、打鍵の強弱がしっかりと音色変化に変換されているかが重要だと考えます。それぞれの弦の振動数の微妙な差が多彩な音色の変化に繋がっていくので、ユニゾンを合わせる作業はとても大切です。

現代のピアノの殆どは平均律による調律ですが、この平均律を割る作業も厳密にみると人により多少なりとも違いが出てしまうでしょうし、出来上がった平均律を高音部と低音部にオクターブ調律で広げていく訳ですが、オクターブ感も人によって微妙な傾向の違いがあるように感じます。


電子ピアノの音源は、生ピアノの音をサンプリングしたものを再生しているので、殆ど音色の違いを感じたりすることは難しいと思いますが、生ピアノの場合は本体の個体差(部材の違い)や弾き方による癖、定期調律の状態、置かれているお部屋の環境(温度や湿度)等々が複合的に絡み合って、自分だけのピアノになっていく面白さがあります。

調律で音律が正しく整っていることは最低限必要なことですが、更には音楽する上でより表現豊かに演奏するために必要な調律について深く掘り下げていくことが調律の面白いところです。
ときどき、お客様から「演奏が上手くなった気がする。綺麗な音で弾くのが楽しい。うちのピアノが一番弾きやすい」などのお声をいただけると嬉しく励みにもなり、更に良い音にしたいなと次への活力が湧いてきます。
日々試行錯誤の連続ですが、実に面白い仕事です。


↑2015年・ジェンキンピアノサービス[ニュージーランド]技術研修より
風変わりなチューニングハンマーを借りて調律中


札幌の一級ピアノ調律事務所ebony and ivory

札幌の一級ピアノ調律事務所 です メーカーや年代を問わずピアノの個性を尊重し一台一台丁寧に作業致します 海外製のピアノ調律もお任せ下さい 年代物のピアノは木材の経年による熟成が進み調整次第ではとても表情豊かな楽器へ変身させることができます お使いのピアノの音色やタッチ等々のご不満をお持ちの際は、ぜひ一度当店にご相談くださいませ everyone's piano is unique.